円形脱毛症はストレスが原因って本当?ストレスを感じていなくても起こるしくみと、相談の目安【連載第3回】ストレスと髪の関係

こんにちは。おもろまちヘア美容Clinic 院長です。

10月も終わりが近づき、沖縄でも朝晩に北よりの風を感じる日が出てきました。季節の変わり目に、髪を整えに美容室へ行く方も多い時期ですね。

美容室で「ここ、髪が抜けていますよ」と言われて初めて気づいた。家族に言われて、合わせ鏡でそっと確かめた。円形脱毛症は、痛みもかゆみもないまま、こんなふうに突然見つかることが少なくありません。

髪のご相談では、「円形の脱毛が、急に増えてきた」というお悩みをお聞きすることもあります。

「円形脱毛症はストレスが原因」とよく聞くだけに、「そんなにストレスを感じていたつもりはないのに」と戸惑う方や、「何がいけなかったのだろう」とご自身を振り返ってしまう方も少なくありません。

けれど今、毛髪の専門家の間では、円形脱毛症は体を守る「免疫」のしくみが関わって起こる病気だと考えられています。ストレスを感じていなくても起こることが多いのです。

連載「ストレスと髪の関係」の第3回です。前回は、体調の変化から数か月たって抜け毛が増える「休止期脱毛症」についてお話ししました。今回は円形脱毛症について、しくみ、タイプ、経過、見分け方、相談の目安まで、できるだけ丁寧にお話しします。

こんな方に読んでいただきたい記事です

・円形の脱毛を見つけて、不安になっている方

・「ストレスのせいでなったのでは」と、気に病んでしまっている方

・様子を見ていいのか、受診したほうがいいのか迷っている方

円形脱毛症は、どんな病気?毛の根元で起きていること

円形脱毛症は、ある日突然、境目のはっきりした丸い形や楕円形の脱毛が現れる病気です。多くは頭の髪に起こりますが、眉毛やまつ毛、ひげ、体の毛に起こることもあります。一生のうちに円形脱毛症になる人はおよそ1.7%といわれ、決して珍しい病気ではありません。

少し専門的になりますが、毛の根元で何が起きているのかを順番に見ていきますね。

1. 毛をつくる「根元」に炎症が起きている

・髪は、頭皮の奥にある「毛球部(もうきゅうぶ)」という丸い根元でつくられています。円形脱毛症では、伸びている途中の毛の毛球部のまわりに、リンパ球という免疫の細胞が集まって炎症を起こしています。

・顕微鏡で見ると根元にハチが群がっているように見えることから、「ハチの群れ」と呼ばれることもあります。

2. 毛は「抜ける」というより「切れる」

・炎症の影響でつくられる毛がもろくなり、毛穴から外に出たところで折れてしまいます。そのため脱毛部分には、毛穴に残った黒い点(黒点)や、短く切れた毛が見られることがあります。

・根元に向かって細く、色が薄くなった毛は、形がびっくりマーク「!」に似ていることから「感嘆符毛(かんたんふもう)」と呼ばれます。

3. 免疫が、自分の毛の根元を攻撃している

・免疫は本来、ウイルスなどの外敵だけを攻撃するしくみです。円形脱毛症では、リンパ球が自分の毛の根元を外敵と取り違えて攻撃してしまいます。こうした病気を「自己免疫疾患」といいます。

・1998年には、患者さんのリンパ球が脱毛を起こしていることが研究で示されました。毛の根元にはもともと免疫の攻撃を受けにくくする守りのしくみがあり、それが崩れることも大きな要因と考えられています。

4. 白い毛は残り、黒い毛が抜ける

・白髪まじりの方が円形脱毛症になると、白髪だけが残ることがあります。白い毛の根元には免疫の反応が起こらないためと考えられています。

・このことから、攻撃の相手は髪の色(メラニン)をつくるしくみに関わる何かではないかと推測されていますが、正体はまだ分かっていません。

また円形脱毛症は、毛をつくる組織そのものが壊れて失われるタイプの脱毛症とは区別されています。

「ストレスが原因」って本当?いま分かっていること

「免疫の病気なら、ストレスは関係ないの?」と思われるかもしれません。ここは、専門家の間でも見方に幅があるところです。

1. 「きっかけになることがある」という見方

・ストレスをきっかけに脱毛が始まる方は、2割ほどといわれています。もともとなりやすい体質の方では、強いストレスが引き金になり得ると考えられています。

・ほかにも、ウイルスの感染や体の疲れがきっかけになるともいわれています。

2. 「関わりはないか、ごく限られている」という見方

・一方で専門家の間では、ストレスは病気のしくみには関係がない、あってもごく限られたもの、というのが大方の見方です。少なくとも、精神的なストレスとの関係は科学的には証明されていません。

・人生で経験するストレスの回数に比べ、円形脱毛症になる回数がずっと少ないことも理由に挙げられています。

3. 根本にあるのは「体質」

・遺伝子を大規模に調べる研究から、円形脱毛症に関わる遺伝子がいくつも見つかっており、どれも免疫の反応に関わるものでした。

・ただし、親から子へそのまま受け継がれるものではありません。親が円形脱毛症になったことがある場合でも、なる割合は約5%とされています。

ストレスに思い当たらないのに円形脱毛症になるのは、まったく不思議なことではありません。つらい出来事のあとに始まったとしても、その出来事だけが原因とは限りません。ご自身の過ごし方とは別のところにある体のしくみから起こるものですから、どうかご自身を責めないでくださいね。

1か所だけ?広がっている?タイプと広さの目安

円形脱毛症は、脱毛の数や広がり方によって、いくつかのタイプに分けられています。

1. 単発型・多発型

・脱毛した部分(脱毛斑)が1か所のものを「単発型」、2か所以上あるものを「多発型」と呼びます。多発型では、脱毛斑がつながって地図のような形になることもあります。

2. 全頭型・汎発型(はんぱつがた)

・頭の髪がほぼすべて抜けるものを「全頭型」、眉毛やまつ毛、体の毛にまで広がるものを「汎発型」と呼びます。

3. 蛇行型(だこうがた)

・後頭部から側頭部にかけて、髪の生え際に沿って帯のように抜けるタイプです。広さにかかわらず、重めのタイプとして扱われます。

4. びまん型

・丸い脱毛斑をつくらず、頭全体がまばらに抜けるタイプで、女性に多くみられます。男性型脱毛症(AGA)などと見分けにくく、軽く見えても急に広がることがあるため、注意が必要です。

もうひとつの物差しが「広さ」です。目安は、頭皮の「25%」。頭全体を4つに分けて、1つ分に満たなければ軽症、それ以上なら重症の目安とされ、より積極的な治療を考える段階になります。鏡だけでは分かりにくいので、家族に後頭部の写真を撮ってもらうと、全体の様子がつかみやすくなりますよ。

いつまで続くの?広がる時期・落ち着く時期・毛が戻る時期

円形脱毛症の経過は、大きく3つの時期に分けて考えられています。

1. 広がっている時期(進行期)

・抜け毛が多く、脱毛斑のまわりに切れ毛や黒い点、感嘆符毛がたくさん見られる時期です。

・炎症が起きてから目に見える変化が出るまでには、2〜3か月ほど遅れがあると考えられています。専門家は、脱毛斑のまわりの毛を軽く引いて抜ける毛の根元を見ることで、今が広がっている時期かどうかを確かめます。

2. 落ち着いている時期(固定期)

・脱毛が6か月以上続き、それ以上は広がる様子がない時期です。新しい抜け毛は目立たなくなりますが、毛はまだ戻っていない状態です。

3. 毛が戻ってくる時期(回復期)

・最初に生えてくるのは細くやわらかい毛なので、一見「薄毛」のように見えます。悪くなっているわけではありませんので、慌てなくて大丈夫です。

・もともと黒い髪の場所でも、多くの場合、まず白い毛が生えて、そのあと黒くなってきます。

経過には個人差があります。軽い単発型であれば、治療をしなくても半年から1年ほどで自然に毛が戻ってくることも多いといわれています。一方で、広い範囲に広がり時間がかかることもあります。

治療を始めた場合も、目に見える太さの毛になるまでには早くて2〜3か月、長い経過の方では6か月以上かかることが想定されています。すぐに変化が見えないのは、毛がつくられるしくみ上、自然なことなのです。

ほかの脱毛とどう違う?見分けるための手がかり

円形脱毛症に似て見える脱毛は、ほかにもあります。最終的な判断は専門家に任せていただきたいのですが、知っておくと役立つ手がかりをご紹介します。

1. 抜けた毛の「根元の形」

・自然に抜けた毛や男性型脱毛症・産後の抜け毛は、根元が丸くふくらんでいます。円形脱毛症の抜け毛は、根元が細くなっていたり、途中で切れていたりします。

2. 自分で抜いてしまう「抜毛症」

・子どもに多く、本人に髪をいじっている自覚がないことも多いといわれています。形が不自然なことが手がかりですが、丸い形に近いと区別が難しく、円形脱毛症と重なっていることもあります。

3. 毛をつくる組織が失われる「瘢痕性(はんこんせい)脱毛症」

・円形脱毛症と見分けにくいものもあります。組織が失われると毛が戻らなくなるため、早めの診断が大切だとされています。

4. 男性型脱毛症(AGA)

・毛が少しずつ細く短くなり、頭頂部や生え際から薄くなっていきます。びまん型の円形脱毛症とは、切れ毛や黒い点があるかどうかが手がかりになります。

円形脱毛症を考える手がかりを、チェックポイントにまとめます。

・急に抜けた

・境目のはっきりした丸い形に抜けている

・毛穴に黒い点や、短く切れた毛がある

・白髪だけが残っている

・眉毛やまつ毛など、髪以外の毛も抜けている

・爪に小さな点のようなへこみがある(毛と爪はつくりが似ているため)

黒い点や切れ毛は肉眼では分かりにくいため、専門家はマイクロスコープ(拡大鏡)で毛穴の様子や毛の太さを確かめて判断しています。

どんなときに相談する?受診の目安と、毎日の過ごし方

円形脱毛症が疑われるときは、皮膚科、できれば毛髪にくわしい専門医に相談することがすすめられています。とくに次のような場合は、早めに受診してください。

・脱毛斑が2か所以上ある、または増えている

・頭皮の4分の1を超えていそう

・生え際に沿って帯のように抜けている

・眉毛やまつ毛、体の毛も抜けてきた

・丸い形ではなく、頭全体から急に抜けている

皮膚科では、脱毛の広さと今の時期を見て治療の考え方を決めます。広さが限られ広がっている時期はステロイドの塗り薬が中心、広い範囲で急に広がっている場合は発症や悪化から半年以内にステロイドを点滴で集中して使う方法がとられることがあります。

落ち着いている時期にはステロイドの注射や、軽いかぶれを起こさせる「局所免疫療法」、頭皮の50%以上の脱毛が6か月以上続く場合には免疫を抑える飲み薬(JAK阻害薬)が使われることもあります。副作用や費用も含めて、医師と相談しながら選んでいくものです。

毎日の過ごし方では、次のことを知っておくと安心です。

1. パーマやカラーは、条件がそろえば楽しんでいい

・円形脱毛症は皮膚の深いところにある根元の病気で、毛そのものとは関係がないため、パーマやカラーを禁止する理由はないとされています。原因になることも、ほぼないと考えられています。

・ただし、抜け毛が多い時期や頭皮に炎症があるときは控え、施術前に脱毛のことを美容師さんに伝えておきましょう。

2. 脱毛した部分は、マッサージを控える

・円形脱毛症の部分をマッサージすると、炎症を悪化させるおそれがあるといわれています。

3. 気になる部分は、カバーしていい

・範囲が狭ければ、髪型やパーマで目立ちにくくできます。短い期間なら、手軽なウィッグでも十分に役目を果たしてくれます。円形脱毛症の患者さんどうしで支え合う会もあります。

ひとりで抱えず、一緒に「今の状態」を確かめていきましょう

円形脱毛症は「ストレスの病気」というイメージがとても強いものです。けれど実際には、免疫の働きと、その背景にある体質が深く関わっています。ストレスに思い当たらなくても起こり、何かが足りなかったから起こるものでもありません。

「どうして私が」より「今、どうなっているのか」。時期と広さが分かれば、何をすればいいのかが少しずつ見えてきます。

当院では、毛髪診断士がマイクロスコープで頭皮と毛穴の様子を一緒に確認しながら、不安に感じていることをじっくりお聞きしています。広さや時期によっては、皮膚科の専門医への受診をおすすめすることもあります。この記事が、少しでも安心して過ごすきっかけになればうれしく思います。

次回予告

第4回は、いよいよ連載の最終回です。髪の悩みは、見た目だけでなく、気持ちや人との関わり方にまで影響することがあります。「人の目が気になって出かけたくない」そんな思いを抱えている方へ。気持ちが沈んだときの過ごし方と、ご家族やパートナーができることをお届けします。

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