急に抜け毛が増えたのはどうして?心と体の負担から数か月後に起こる「休止期脱毛症」と、様子を見ていい目安【連載第2回】ストレスと髪の関係

こんにちは。おもろまちヘア美容Clinic 院長です。

10月も後半に入り、沖縄でもようやく過ごしやすい日が増えてきました。季節の変わり目は、体調をくずしやすい時期でもあります。どうぞご無理なくお過ごしください。

朝、髪をとかしたブラシに、いつもより多くの髪が絡んでいる。髪を結ぼうと手ぐしを通すと、指の間に何本も残る。

髪のご相談では、こんなお悩みもよくお聞きします。

「抜け毛が急に増えて、毎日いやな気持ちになる」

「思っていた以上に、髪が減ってしまった気がする」

抜け毛が急に増えると、「このまま全部抜けてしまうのでは」と、不安で頭がいっぱいになってしまいますよね。

そして振り返ってみると、体調はもう落ち着いているのに、抜け毛だけが今になって増えている。そんな方もいらっしゃるのではないでしょうか。

連載「ストレスと髪の関係」の第2回です。前回は、ストレスが関わると考えられているもの・関係が薄いと考えられているものを整理し、その中で「ヘアサイクルの乱れ」にもふれました。

今回は、その代表といえる「休止期脱毛症(きゅうしきだつもうしょう)」について、しくみと見分け方、様子を見ていい目安までお話しします。

こんな方に読んでいただきたい記事です

・ここ最近、急に抜け毛が増えて不安な方

・数か月前に、発熱や手術、出産、急な体重の変化などがあった方

・この抜け毛がいつまで続くのか、相談したほうがいいのか知りたい方

まず確かめたい、「ふだんの抜け毛」の本数

頭の髪は、およそ10万〜12万本あるといわれています。髪は毎日少しずつ入れ替わっているので、抜け毛があること自体は自然なことです。

1. ふだんの抜け毛は1日70〜80本ほど

・自然な抜け毛は、1日に70〜80本ほどといわれています。髪を10万本、1本の寿命を4年として計算すると、1日に抜ける本数はおよそ68本になります。

・抜け毛の数には個人差があり、80本を超える方もいます。100本を超えなければ、その方にとっての自然な範囲と考えられています。

2. 気にかけたいのは「100本以上が続く」とき

・1日に100本以上の抜け毛が続く状態は、ふつうの生え変わりとは違うサインと考えられています。

・とはいえ、毎日正確に数えるのは大変です。「いつもと比べて、明らかに多い日が続いているか」を目安にしてみてください。

3. 秋は、抜け毛がやや増える季節

・抜け毛は秋に多く、冬は少ない傾向があるといわれています。9月を中心に、秋にやや増えるという見方もあります(個人差があります)。

・この時期に「少し多いかな」と感じる程度なら、季節の影響も考えられます。

どうして、髪がまとめて抜けるの?

髪は1本1本が、次の3つの時期をくり返しています。この生え変わりのリズムを「ヘアサイクル」と呼びます。

1. 成長期(伸びる時期)

・毛根で細胞が分裂し、髪がつくられて伸びていく時期です。長さは男性で3〜5年、女性で4〜6年ほどといわれ、髪全体の約85〜90%がこの時期にあります。

2. 退行期(伸びるのをやめる時期)

・細胞の分裂が止まり、毛根が縮んでいく時期です。2〜3週間ほど続きます。

3. 休止期(休む時期)

・髪が毛穴の中にとどまって、抜け落ちるのを待つ時期です。約3か月続き、髪全体の10〜15%がこの時期にあります。この間に、毛穴の奥では次の髪をつくる準備が始まります。

大切なのは、頭の髪はこのリズムが1本ずつ独立していることです。成長期の長さがおよそ2〜6年とばらばらなので、休止期に入る時期もずれて、毎日一定の数が抜け、一定の数が生えてくる。そのおかげで、髪の量はある程度一定に保たれています。

ところが、体に大きな負担がかかると、成長期にあった多くの毛が一気に退行期・休止期へ移ってしまうことがあります。ばらばらだったリズムが、そろってしまうのです。

休止期の毛は約3か月とどまってから抜けるため、きっかけから数か月たって、まとめて抜けてきます。その結果、1日に100本以上の抜け毛が出るようになります。これが「休止期脱毛症」です。

ちなみに、休止期の毛が自然に抜けることは「休止期脱毛」と呼ばれ、ふだんの抜け毛も含まれます。「症」がつく休止期脱毛症は、抜け毛が増えた状態を指す言葉として区別されています。

抜けた毛の根元から分かること

抜けた毛の根元の形には、そのとき毛根で何が起きていたかが表れます。

1. 根元が白く、丸くふくらんでいる

・休止期を終えて自然に抜けた毛は、根元が丸くふくらんだ「こん棒」のような形をしています。色をつくる細胞からの色素の供給が止まっているため、根元は白っぽく見えます。

・休止期脱毛症で抜ける毛も、この形です。つまり、抜ける準備が整った毛が、いつもより多く抜けている状態といえます。

2. 根元が細くとがっている、途中で切れている

・成長期の途中で毛根がダメージを受けると、根元がふくらまず、先細りになった毛や、途中で切れた毛が抜けてきます。円形脱毛症などで見られる形です。

3. 根元は丸いけれど、毛そのものが細く短い

・男性型脱毛症や女性型脱毛症では、抜け毛の根元は自然な抜け毛と同じ丸い形ですが、毛そのものが細く、短いものが多くなります。

白い紙の上に何本か抜け毛を並べ、根元の形と太さ、長さを見てみてください。太さのそろった、根元の丸い毛が多ければ、休止期脱毛症の抜け方に近いと考えられます。細く短い毛が目立つときや、根元が細い毛が混じるときは、一度相談してみると安心です。

数か月前の出来事に、思い当たりませんか?

休止期脱毛症は、はっきりした原因が分からないことも少なくありません。そのうえで、きっかけとして知られているものには次のようなものがあります。

1. 体への大きな負担

・高い熱が出る感染症、外科手術、けが、体力を消耗する病気などです。

・高熱を伴うウイルス感染症のあとに抜け毛が増えることは以前から知られており、新型コロナウイルス感染症の3か月後に抜け毛が増えたという例も報告されています。こうした例では、数か月で落ち着いていくことが多いとされています。

2. 食事・栄養の変化

・短期間の急激なダイエットによる体重の減少、カロリーやたんぱく質の不足、鉄の不足などです。ビタミンAのとりすぎも、きっかけのひとつにあげられています。

・ダイエットによるものは、ふつうの食事に戻すと落ち着いていくとされています。

3. ホルモンの変化

・甲状腺の働きが低下したり、高まったりしているときです。甲状腺の働きが低下している場合は、その治療によって落ち着いていくとされています。

・そして出産後です。7月の連載でお届けした「産後の抜け毛」も、休止期脱毛症の代表的な例です。出産後2〜5か月ごろから抜け毛が増え、約半年で髪の量が戻ってくるといわれています。ピル(経口避妊薬)の使用後に起こることもあります。

4. 頭皮の炎症

・フケや湿疹が出る脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)や、毛染めなどによるかぶれ(接触皮膚炎)のあと、数か月して抜け毛が増えることがあります。

5. お薬の影響

・血液を固まりにくくする薬、一部の血圧の薬、コレステロールや痛風の薬、一部の抗うつ薬など、さまざまな薬がきっかけになる可能性があります。

・気になる場合も、自己判断でやめずに、処方した医師に相談してください。

6. 気持ちの負担

・強いストレスも、きっかけのひとつにあげられています。ストレスを受けたときにつくられるホルモンによって、ヘアサイクルが乱れる可能性があると考えられています。

思い当たる出来事が見つかると、「あのときの無理がいけなかった」とご自身を責めてしまう方もいらっしゃいます。けれど、熱が出たことも、出産も、忙しい時期を乗りきったことも、体がその時その時を一生懸命に乗り越えてきた証です。抜け毛は、お手入れが足りなかったせいではありません。

この抜け毛、いつまで続くの?様子を見ていい目安

1. 数か月で落ち着いていく場合

・休止期脱毛症の多くは、数か月で自然に落ち着いていきます。これを「急性休止期脱毛症」と呼びます。

・抜け毛が落ち着いても、見た目の髪の量が戻るまでには少し時間がかかります。髪が伸びるのは1日に約0.4mm、1か月で1cmあまりです。新しい髪が伸びそろうまで、焦らず見守っていきましょう。

2. 6か月以上続く場合

・きっかけが取り除かれないまま続いていると、1日100本以上の抜け毛が長く続くことがあります。6か月以上続くものは「慢性休止期脱毛症」と呼ばれます。

・長引く背景には、甲状腺の働きの低下や鉄の不足、栄養の不足、膠原病(こうげんびょう)などの体の病気、お薬などが隠れていることもあります。

・長く続くと髪全体がまばらになることもあり、女性型脱毛症との見分けが難しくなる場合があります。専門家は、3cmに満たない短い抜け毛が多いか、耳のすぐ上の髪まで薄くなっているか、などを手がかりに見分けています。

3. 相談を考えたい目安

次のような場合は、ひとりで様子を見続けず、一度相談してみてください。

・抜け毛が増えて半年近くたっても、減ってくる気配がない

・思い当たるきっかけがないのに、明らかに多い抜け毛が続いている

・抜け毛に、細く短い毛や、根元が細くとがった毛が多く混じる

・円形の脱毛や、頭皮の赤み・強いかゆみ・ベタつくフケがある

・お薬を飲み始めた時期と、抜け毛が増えた時期が重なっている(まずは処方した医師へ)

反対に、きっかけに思い当たりがあり、抜け毛が少しずつ減ってきているなら、焦らず見守ってよいことが多いでしょう。

抜け毛が気になる日に、今日からできること

1. 週に1回、同じ条件で記録する

・「洗髪後のブラシ」「朝起きたときの枕」など場面を決め、週に1回、抜け毛の量と根元の形をメモしておきましょう。

・数字や写真で残しておくと、「落ち着いてきているのか」「長引いているのか」が分かりやすくなり、相談するときの大切な材料にもなります。

2. 髪は、いつもどおりやさしく洗う

・抜けるのが怖くて、シャンプーを控えたくなる方もいらっしゃいます。けれど、成長期の毛はしっかり根を張っていて、健康な毛を1本抜くのにも約50gの力がいるといわれます。

・洗うときに抜けるのは、すでに休止期に入り、抜ける準備ができていた毛です。洗うことで抜け毛を増やしているわけではないと考えられますから、指の腹でやさしく洗い、頭皮を清潔に保ってください。

3. 食事を「減らしすぎない」

・急なダイエットや食事の偏りは、髪の材料不足につながります。魚や鶏のささみ、乳製品、卵、豆腐や納豆などの大豆製品を、毎食どこかに取り入れることを意識してみてください。

・今は体を回復させる時期です。抜け毛が気になっても、食事を大きく減らすのは控えましょう。

がんばってきた体をいたわりながら、一緒に確かめていきましょう

抜け毛が急に増えると、どうしても悪いほうへ考えてしまいがちです。けれど休止期脱毛症の多くは、体がひとつの負担を乗り越えたあとに起こる、一時的な生え変わりの波です。抜けた毛穴の奥では、次の髪をつくる準備が始まっていると考えられています。

「抜け毛を数えて落ち込む」より「ここまでがんばった体をいたわる」。そんなきっかけにしていただけたらと思います。

そのうえで、抜け毛が長引くとき、ほかにも気になる変化があるときは、専門家と一緒に原因を確かめることが安心への近道です。当院では毛髪診断士が頭皮と髪の状態を確認し、必要に応じて医師と連携してご相談にのっています。「様子を見ていいのか知りたい」というご相談だけでも構いません。

次回予告

第3回のテーマは「円形脱毛症」です。「円形脱毛症はストレスが原因」と聞いて、不安になったことはありませんか。実は、ストレスを感じていなくても起こることが多いといわれています。円形脱毛症が起こるしくみと、相談の目安をお届けします。

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